晩餐会に招待されたアンとギルバート。
新しい髪型にしたアンですが
ギルバートの「きみの髪には向かないね」の言葉に傷つきます。
7巻の「二つの影」という章は、嫉妬したり、絶望したり、と、中年を意識しだした悩めるアンの心の内が綴られたページです。
アンとギルバートの長男ジェムと次男ウォルター、三男のシャーリーまで、村の男性がそうしたように出征していきました。
そして、アンの文学の才能を受け継いだウォルターは帰らぬ人となったのです。その後、塹壕で書かれた詩のすばらしさが世界中の人に知れわたることとなり、詩人ウォルターは皮肉にも一躍有名人になりました。
長男ジェムはまだ還りません。家族があきらめかけたとき、希望を与えてくれたのはジェムの愛犬マンディです。駅に住みついて、これまでどんなに家族が連れ帰ろうとしても「丁重にお断り」してきました。来る日も来る日もジェムを連れていった黒い煙を吐く怪物を待ち続け、列車が着くたびにご主人様を探しました。今では有名犬となったマンディです。
四年半が経って、駅に降り立ったジェム。狂わんばかりのマンディ。このページは犬嫌いの人もきっと涙することでしょう。
「どの犬も持ち合わせたことがないほどの深い愛、律儀で忠実な心臓、人の魂に触れるものがのぞく褐色の目」。マンディはこんなふうに書かれています。
マントを脱ぐと春色のドレスです。
このごろギルバートのちょっとした癖がやけに神経にさわるアン。家具を見るような目で見られるのも癪にさわります。
ふたりは忙し過ぎたようです。
アンの変化に気づいたギルバートは長い長い休暇をとることにしました。学会も兼ねて一緒にヨーロッパ旅行にでかけることにしたのです。
今ではギルバートは博士であり、フォア・ウィンズ全地区にわたり幼いギルバートたちがばらまいたようにおり、ギルバティーンという女の子までいます。誰からも信頼され尊敬される医師となっていました。
アンシリーズ10巻から登場のガートルート・オリバー。
教師で28才。
リラを喜ばせたいばかりにブライス家に下宿してもらっています。
アンのちょっと過保護な一面が見えます。
3か月後、マリラやスーザンに託していた子供たちも炉辺荘に戻ってきて、ふたたび賑やかで楽しい生活です。
マリラはこのとき85歳でした。
年を重ねても相変わらず瑞々しいアン。体型も変らないので親友のダイアナが不思議がります。
いまも「僕のアンお嬢さん」って呼ぶギルバート。
小さな谷で遊ぶアンの子供たちと近くの牧師館の父子、アンをめぐる人たちのことや、愛に飢えたメアリー・ヴァンスをミセス・コーネリアが養女として迎える顛末など、物語は賑やかに進みますが、どうやら第一次世界大戦が始まる気配で、楽しい事ばかりではなくなってきました。
シリーズ9巻「虹の谷のアン」にはじめて登場するメアリー・ヴァンス。
リラが赤十字婦人会の用事で訪れた家で出会った生まれたての赤ん坊。母親は亡くなり、孤児院行きの寸前です。
いきがかり上、しぶしぶスープ鍋に入れて家に連れ帰ったから大変です。
大きな鍋の小さな住人は、ジムズ・キッチナーと名付けられ、ここ炉辺荘の家族の一員となり大切に育てられました。
ジムスは、だれ疑う余地もなく、それに適う、もって生れたすばらしい資質がありました。
子ども嫌いのリラが、やがてにジムスに深い愛を抱くようになっていく自然な流れが優しい章、「リラの決心」です。
五年後、ジムスにまたとない幸運が訪れ、物語ならではの楽しさで満ちている巻です。